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キャピタル株式会社 藤田政雄さんコーヒー鑑定士から見て、
エメラルドマウンテンは
どんなコーヒーですか。

香水に調香士がいるようにコーヒーの世界にもその香りや味わいききわける専門家がいます。それがコーヒー鑑定士。家庭用コーヒーのトップメーカーキャピタルで、長い間コーヒーの味を追求されている藤田さんに、鑑定士の仕事についてお聞きしました。

キャピタル株式会社 販売促進・商品企画課部長
藤田政雄さん

ブラジルとコロンビア、二つの鑑定士資格のへの道

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—コーヒーの生産国にはそれぞれコーヒー鑑定の制度があって、日本で一ばん知名度の高いのがブラジルのコーヒー鑑定士ということですね。
世界最大のコーヒー生産・輸出国であるブラジルにとってコーヒーの品質やグレードの管理はとても重要なこと。その専門職は大きな権限をもつ重要な資格と聞きました。
藤田さんはそのプラジルの鑑定士の資格を持っていらっしゃるのですね。

藤田部長:はい、コーヒーの鑑定には、まず生豆の粒の大きさや欠点豆の混入率などを見る外見上の判断と、カップテストでの味覚の判断があります。
キャピタルの場合は現地で厳密に品質を見極めて輸入していますので、私の仕事は販売にたえる最上級の条件で豆の特色をひきだすことにあります。
主に焙煎の仕方を判断するといったことです。

—焙煎、ローストは毎回ちがうものなのですか。

藤田部長:種類によってほぼ決まっていますが、天候によって水分量なども微妙にかわりますので、豆ごとの判断が大切です。

—鑑定士の資格を得るためにはどんな勉強をするのですか。

藤田部長:66時間のカッピングが義務付けられます。カッピングとはコーヒーの特性や品質を評価する作業です。焙煎したコーヒーを挽き、まず粉の香りを嗅ぎ、次にお湯を注ぎ、つぎにブレイク(かき混ぜた)されたものを嗅ぎ、合計3回のプロセスで香りを評価します。その後は上澄みをチェックして味にバラつきがないか、不純物が混じっていないかなど味の確認します。

—視覚・触覚、臭覚・味覚と、感覚をフルに動員して判定するというのは、そんな簡単に身につくことではありませんね。ブラジルでも相当な熟練を必要とすると聞きます。

 

お客さまと一対一で磨き、追求しつづけたコーヒーの味

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藤田部長:私の場合は、昭和45年頃からアルバイトとして始まったコーヒーとの長い関わりがありました。
輸入食品の全盛時代で、東急プラザの地下のカウンターでコーヒーを出していました。当時はまだ一杯取りではなく50杯くらいをネルでいれるのですが、私が最初に淹れたコーヒーは、一口飲んだ店長からみごとに全部捨てられてしまったのです。

—それはショックでしたね。

藤田部長:それでかえって興味をもって自分なりに研究をするようになりました。
当時は盗んで覚えるという時代ですから、お湯の温度やお湯のかけ方、蒸らし方など自分なりに試行錯誤をくり返し、また、本を読んで研究もしました。

—昭和40年後半といえばコーヒーはまだ一般的ではなく、コーヒーに関する情報なども今とは全く事情が違いますし、かなり高級品、一部お金持ちの飲み物でしたよね。

藤田部長:そうですね。普通品のコーヒーでもそうでしたが、昭和47年(1971年)頃、日本橋髙島屋に高級コーヒーばかりを集めた特選コーナーが出来たのです。そこにテイスティングカウンターがあり、社員になっていた私はいきなり責任者になりました。

—まだ20代の若い店長さんですね。

藤田部長:そこに毎朝、髙島屋の店長さんが飲みに来られ、コーヒーをお出ししていました。その後、リニューアルがあり、日本一のコーヒー売場が出来、4席のカウンターが出来ました。お客さまが目の前のカウンターですから全部見えてしまいますし、お客さまが美味しく飲んでいるかどうか、反応もすぐ分かります。4客だけですから、一時は長い列ができ、一日25回転以上していました。

—そのようにお客さまの舌で鍛えられた経験が、2002年のブラジルコーヒー鑑定士の資格取得で裏づけられたということでしょうか。しかもその後、コロンビアの鑑定士の資格も取られたそうですね。

藤田部長:はい、コーヒー農園で栽培の現場を見たりコーヒーの分析センターで勉強をしたりと、コロンビアには1ヵ月ほど滞在して試験に臨みました。

 

再びくるミディアムローストの時代。

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—日本でブラジルとコロンビア二つの鑑定士資格をお持ちの方は余りいらっしゃらないのではありませんか。

藤田部長:さあどうでしょうか。ともかく日本全国の売り場やコーヒー教室など人さまの前でコーヒーを淹れつづけ、味を追求した40年の結果だと思います。

—その間にインスタントコーヒーや缶コーヒーが生まれ、レギュラーコーヒーも一般的な飲み物になりました。近年は海外のチェーン店も増えて、そのすごい変化をどのようにご覧になりますか。

藤田部長:スターバックスやタリーズなどで若い人がコーヒーをファッション感覚で飲むようになりまして、それで裾野がひろがったのは、コーヒー屋としては良いことだと思います。ですがヨーロッパ系は煎りが深いので、日本人にはアキがくるのではないかと。いずれミディアムローストに還ってくると、私は考えています。

—ミディアムローストが日本人に合う味ですか。

藤田部長:そう思います。強く焼くほど苦いだけの味になって、豆の品質もある程度ゴマカシが効きます。産地で厳選された豆をきちんと淹れて飲む、そんな素材の良さを求める飲み方がこれから拡がっていくだろうと思っているのです。

 

エメラルドマウンテンと出会って22年。

—産地で厳選された豆といえば、エメラルドマウンテンはまさにそうですね。コロンビアコーヒーのなかから選びぬかれた1パーセントの超エリート豆です。

fujita56藤田部長:エメラルドマウンテンは今年で発売が始まって22年になりますが、その頃は私も売り場に立っておりましたので良く覚えています。
コーヒー好きの方というのは、これと決めたらもうそればかり、なかなか違うコーヒーには移らないのです。それで、まず飲んで味わっていただこうと、試飲を盛んに行いました。そしてご自分の好みのコーヒーにブラスαで買っていただこうと。

—ご自身は最初エメラルドマウンテンを飲まれたときに、どう感じましたか。

藤田部長:最初はちょっと酸味が強いかなと感じたのですが、すぐに上品な甘みのある酸味が好きになりました。やわらかくまろやかなブルマン系の味で、毎日飲むには一番かなとも思ったのです。それからはコーヒー教室で使うコーヒーは必ずエメラルドマウンテンにしています。生徒さんもかならず美味しい言われますし、今ではキャピタルのストレートコーヒーではかなり人気上位になっています。

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—コーヒー教室は全国で開かれていて、最近は生徒さんもかなり増えているとか。

藤田部長:若い人も含めて年代の幅がひろくなっています。リタイアしたからとご夫妻でみえる方も少なくありません。忘れたからもう一度来ましたとおっしゃる年配の方もおられます。お宅でエメラルドマウンテンを淹れたらどうも味が違うと言われて。

エメラルドマウンテンのまろやかさは日本食にも良いですし、繊細な日本人の味覚にあうのだと思います。

 

エメラルドマウンテンをもっと美味しく淹れるには。

fujita34—エメラルドマウンテンをより美味しく飲む淹れ方のポイントはなんでしょうか。

藤田部長:ペーパーフィルターを使ったドリップをお勧めしています。サイフォンは香りいいのですが、味はもう一歩かと。次に人数分に合った適量の粉を用意すること。
一般的に1人メジャースプーンで一杯分10グラムと言われますが、何人分淹れるか、によって適量も変わります。
1人分でしたら多めに、メジャースプーン1杯半。
3人でしたら2.4から2.8杯、5人でしたら70パーセントが目安です。

fujita37—カップを暖めて、ペーパーの下と横を折ってから熱湯で匂いを取り、粉を入れる。ペーパーを折ることで、途中で破けたりするのを防げるということですね。

藤田部長:次に注ぐお湯の温度です。沸騰した100度のお湯を下ろすと98度、細い口を通っている間にさらに少し下がる90度から95度が適温です。低いと酸味が出てしまいます。熱すぎると苦味がでます。

—専用のポットではなくヤカンの場合は、手首をうまく使って細く注ぐのですね。

 

 藤田部長:注ぎ方のポイントです。

粉を平らにならして真ん中を小さく凹まします。

粉を平らにならして真ん中を小さく凹まします。

そこの凹みの部分だけにお湯を注いで泡がでて丸くふくれてきたら一旦止めて、ポツポツ泡が消えるまで蒸らすために20〜30秒待つ。

そこの凹みの部分だけにお湯を注いで泡がでて丸くふくれてきたら一旦止めて、ポツポツ泡が消えるまで蒸らすために20〜30秒待つ。

待つといっても下から落ちるのをとぎらせないことが大切です。

待つといっても下から落ちるのをとぎらせないことが大切です。

—お湯を注ぐのは真ん中だけ、周りにかけてはいけないのですね。

 

雑味を出さないポイントは。

fujita29藤田部長:豆の割目のシルバースキンという薄皮が周りに溜まっていて、お湯をかけるとそこから雑味や汚れがでてしまいます。ですから真ん中だけ。2湯、3湯とお湯を注いでいって、表面に泡が立たなくなったらガスが出きったということですので、それでお終いです。

—コーヒーには先端化学でも分析しきれないほどの数の成分が含まれているそうですが、そのガスも成分の一部ということですね。

藤田部長:約100種類のガスが含まれているそうですが、最近の研究では、良い成分ほど速くでる。時間がたつほど不良成分がでるという結果です。下から落ちるのをとぎらせないというのも、時間をかけて不良成分がでてしまわないようにするため。最後まで落とさないでその前にドリッパーを外してしまうのも、同じ理由です。 

—淹れ方のそれぞれに科学的根拠があり、それが立証されたのは最近ということですね。

 

深く澄んで美しく、それが美味しいコーヒー。

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藤田部長:研究が近年になってずいぶん進みましたが、私などが長い経験を通してやってきたことが、最新の研究で裏づけられたと感じています。

さて、ドリッパーを外したら、最後にスプーンでかき混ぜ、真ん中の泡を捨てます。
お客様でいくら容器をきれいに洗っても、どうしても油が浮いてしまうという方がいます。コーヒー自体が油を含んでいますので、このひと手間で油がとれます。

—ほんとうに透明で美しいコーヒーができました。この美しさが美味しさなのですね。fujita21
豆の挽き方はどのくらいが適切ですか。

藤田部長:中細挽きがいいです。これも最近の研究ですが、中細挽きでできる1mm平方のコーヒーの粉には1万5,000個の空洞ができていて、その空洞壁に成分がある。その成分がドリップで上手く抽出されるのが中細挽きなのです。

—中細挽きの適量の粉をいま伺ったような適切な温度、適切な方法で淹れれば、誰でも美味しいコーヒーが淹れられるのですね。

 

正しく淹れればかならず美味しい。

fujita13藤田部長:そうです。飲む前から淹れ方を見ると味がわかります。正しい淹れ方でいれたものは透明感のあるコーヒーになり、その豆のもつ成分が上手く抽出されて味わいも格別です。

—カフェブームからお家コーヒーへとレギュラーコーヒーを自宅で愉しむ方が増えたこの頃ですが、キャピタルの味を創られているともいえる藤田さんから、何かアドバイスはありますか。

藤田部長:コーヒーはご自分が美味しいと思ったものが一ばん、値段ではありません。
ある程度の品質の豆をちゃんと淹れる。「コーヒーってこんなに美味しかったのですね。」と教室の生徒さんは最後に必ずおっしゃいますが、正しい淹れ方をマスターしてコーヒーの味わいをさらに深めて下さると嬉しいですね。

—明日からもっと美味しいコーヒーが飲めそうな気がします。今日は有益なお話をありがとうございました。

藤田 政雄(ふじた まさお)

昭和47年3月 青山学院大学理工学部物理学科卒業
同年4月美家古食品株式会社(現キャピタル株式会社)入社
昭和47年7月〜日本橋髙島屋コーヒー売場担当
平成2年5月〜本社販売促進課担当

■資格
日本紅茶協会認定ティーインストラクター
ブラジル(サントス商工会議所)認定コーヒー鑑定士
コロンビア(コロンビア国立生産者連合会・FNC)設定コーヒー鑑定士

■社外講師
日本レストランディレクトゥール コーヒー・紅茶講師
日本紅茶協会ティーアドバイザー・コーヒー講師

■ブラジル、コロンビア、グァテマラ、インド、スリランカ、インドネシア、台湾等産地研修参加

著書 コーヒー事典知れば知るほどおいしく飲める コーヒー辞典
藤田政雄 監修(日本文芸社)

★ペーパードリップ、ネルドリップのしかたが動画で見られます。
http://www.nihonbungeisha.co.jp/coffee/


キャピタルコーヒー株式会社
住所:〒113-8601東京都文京区本駒込6-1-9
お問合せ:お客様相談室フリーダイヤル0120-501-631(月〜金 9:00〜17:00)
URL:http://www.capital-coffee.co.jp/

キャピタルコーヒーYahoo!店
http://store.shopping.yahoo.co.jp/capital-coffee/index.html

この記事は、2009年〜2011年の間に公開された記事のバックナンバーです。藤田氏は2011年に逝去されました。
コロンビア産コーヒーに対するエメラルドマウンテンの割合も、その時の収穫量などにより、1%と表示されていることがあります。