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Image90あるとき頂いたチーズケーキ。
チーズ系といえばコーヒーに合うスィーツの代表の一つですが、
その一切れの美味しさといったら・・・。

天使の羽根がふんわりと溶けてゆくように、口に広がるやわらかく優しい甘さ。やがて甘さは濃厚なチーズの風味と微妙に響きあい、いくつのも味のハーモニーを奏でて消えてゆきました。
こんなケーキをつくるパティシエにお会いしたい!と、最近TVなどで話題の「プリモ スィーツ」白金店の工房に、チーフ・パティシエ 熊切 啓人さんをお訪ねしました。

「プリモ スィーツ」チーフ・パティシエ 熊切 啓人さん

日本人の味覚は世界一、その舌に満足をとどけるスィーツを

Image4Image5— こちらのチーズケーキをいただいて、その美味しさには感動しました。

熊切さん:あの半生チーズケーキはもう34、5年前、当時はフレンチの料理をやっておりましたので、しめくくりに「インパクトのあるデザートを」と作りだしたものです。それが非常に評判になり有名デパート各店で売ったりしまして、今では菓子1本となりました。

— 当時としては、それまでにない全く初めてのケーキだったということですね。

熊切さん:はい、オリジナルです。パティシエとしては、新しいもの世にないものを造ることが喜びですから、それが今も新しいお客さまに喜んでいただけるのは幸せです。

— 新しいケーキを作られるとき、最初はなにから始まるのですか。

熊切さん:まず味のイメージ、そして材料です。この粉、このチーズというように、ある意味ではまず食材ありきともいえます。小麦粉、乳製品、卵など各地から厳選した素材それぞれの特性を引きだし、組み合わせるという計算があり、最後にそれを味わいする技術です。

— たとえば、どんなことですか。

熊切さん:粉の練り具合とか温度、タイミング、焼き方などです。ケーキの味も時間とともに変化していきますから、つねに確認も必要です。たとえばチーズケーキの場合は釜からだして直ぐには味が全然ありません。それが冷めきって一日、24時間くらいで濃厚になり口どけも良くなって最高の美味しさに変わります。

— 数えきれない程多くの要素がひとつになってあの美味しさが生まれる訳ですね。パティシエはとても創造的な仕事だと感じます。

Image13 Image11熊切さん:おなじレシピで造っても、その人の特性や個性が反映されるのも不思議です。
その時の体調によっても変わります。疲れていては思うようにできないので、そのあたりの自己管理も必要ですし、なにより舌の感覚が大切ですから煙草などは大敵です。

— そのように大切にされている舌で味わっていただいて、エメラルドマウンテンの印象はいかがですか。

熊切さん:今まで飲んできたコーヒーと全く違います。素晴らしいです。
この香りと味が口のなかで全体にまとわりつくように広がって、さらに香りが逃げずにいつまでも残っています。くどくなく、もたれず、こんなコーヒーは珍しいですね。

— パリを中心に長くヨーロッパで修行されたそうですが、あちらのコーヒーはどうですか。

熊切さん:ヨーロッパは全体に濃くてクセがあります。ケーキもかなり甘いですね。
味覚のすぐれている日本人には甘すぎます。日本人の舌は世界一肥えていると思います。

— 最近は日本料理に学ぶフレンチのシェフも増えていると聞きますが。

熊切さん:それはパティシエも同じで、日本のスィーツに学ぶ傾向もあるようです。

 

パティシエの仕事は喜びばかり

Image5Image4熊切さん:私は24才でパリに行き、料理とスィーツ、ワインの勉強をしました。スイスのレマン湖畔のホンデュで有名なホテルでは、チーズをデザートや他の分野にもいろいろ応用し、2年で山ほどレシピを手にしました。まだまだそのホンの一部しか日本で応用はしていませんが。

— 応用というと、向こうでのレシピそのままではない、ということですか。

熊切さん:日本で使う素材の違いもありますし、日本人の繊細な味覚にあうように変えるということですね。

Image2Image1— ヨーロッパでの食についての幅広い修行を背景に、それをさらに日本的に洗練した味が、このケーキに詰め込まれているのですね。

熊切さん:パティシエとしては、さらに新しいものを造りだしていきたい気持ちです。
新しい味のイメージがうかび、それが自分の思った通りにできた瞬間の喜びといったら・・もう嬉しくて子どもに返って飛び跳ねます。

— 反対にパティシエとしての苦しみはありますか

熊切さん:ありません。わたしは思ったことは必ずやり遂げないと気がすまない性質ですから、必ずイメージ通りのものを作ります。ですから、あるのは喜びだけです。

— 新しいイメージはどんなときに何処から生まれますか。

熊切さん:出会いでしょうか、初めてのもの、好きなものに触れたとき、それを生かして新しいものを造りたくなります。今回もそう、このエメラルドマウンテンを初めて飲んで、すぐに新しい味が浮かびました。贅沢なコーヒーと贅沢なチーズケーキ、素敵な出会いになると思いませんか。

— それは楽しみですね。今は、熊切さんがエメラルドマウンテンとベストマッチと思われるケーキはどれですか。

熊切さん:やはり半生タイプの「プリモフロマージュ」です。口の中でいつまでも残るエメラルドマウンテンコーヒーの香りと、口どけの良いケーキの甘さが一緒になって醸しだされる味わい、それは素晴らしいと思います。

— 実はもう味わわせていただきました。おっしゃる通り、今でもあの余韻がどこかに残っているようです。それほど鮮烈!お互いが引き立てあって、エメラルドマウンテンもケーキもより美味しく感じられて、ほんとうに至福の時間でした。
これからも美味しいスィーツ造りをよろしくお願いします。

熊切 啓人 Kumakiri Hirohito

ヨーロッパで菓子、料理、ワインを学び帰国後フレンチレストラン「バイヨンヌ」をオープンし、オーナーシェフとして活躍。そこで出した半生チーズケーキが話題となり、その後菓子専門に。
現在は「プリモ スィーツ」チーフ・パティシエとして新たなスィーツ造りに挑戦中。

この記事は、2009年〜2011年の間に公開された記事のバックナンバーです。表示されているゲストの方の所属や肩書きは、掲載当時のものです。また、コロンビア産コーヒーに対するエメラルドマウンテンの割合も、その時の収穫量などにより、1%と表示されていることがあります。